スパイシーな地理学者見聞録

地理学が好きで、日本各地ローカルなことから、世界・宇宙など広大なことにも思いを巡らせて、幅広く楽しむブログです。

世界の六大州のスパイシーな境界事情③ ~地中海の豆知識とジブラルタル海峡周辺事情~

実は「地中海」は1つだけではありません!

 

 

「地中海」と言えば、ユーラシア大陸とアフリカ大陸の間にある海域「ヨーロッパ地中海」を意味している場合がほとんどです。

 

ところが、地理学・海洋学としては、 「地中海」は、ざっくり言うと大陸や島などの陸地に囲まれた海域を指しています(海洋深層水の流れや塩分濃度による分類など専門性の高めの話は省きます)。

 

「地中海」の代名詞かつほぼ固有名詞となっているのが、ヨーロッパ大陸(一部アジアまで及ぶので厳密にはユーラシア大陸)とアフリカ大陸に囲まれた「ヨーロッパ地中海」ですが、

地理学者・海洋学者といった方々からしたら、「地中海」は1つだけじゃないし、世界最大の「地中海」は「北極海なんですけどね。っと、ちょいちょい思っている人もいたり。

 


f:id:spicy-geographer:20181224021940j:image

世界最大の地中海「北極海は、「ヨーロッパ地中海」の約5.6倍もの広さ

北極海を、太平洋・大西洋・インド洋と並ぶ「大洋」の1つと見なす場合と、大西洋に属する「地中海」と見なす場合がある 

 

 

僕も「地中海」がらみの話をするときは、ついついその前置きをしたくてウズいている者の1人です。

で、結局今回は本場の方の「ヨーロッパ地中海」の話ですが、以降「ヨーロッパ地中海」のことを「地中海」と表記する上で、前置きをしちゃいました。

 

 

海の要所「ジブラルタル

 

 


f:id:spicy-geographer:20181224022202j:image

 

ヨーロッパ地中海(以下「地中海」と表記)の外海・大西洋との出入り口となっているのは、

最短幅約14キロメートルの狭さのジブラルタル海峡で、軍事上・海洋交通上、世界的にものすごく重要な海峡地域となっています。

 

 


f:id:spicy-geographer:20181224022240j:image

 

ジブラルタル海峡は、欧州側の「スペイン」と、アフリカ側の「モロッコ王国に挟まれた地峡で、欧州とアフリカの境界となっていますが、

このジブラルタルという土地は、スペインの中にある「イギリス」の海外領土です。

 

ジブラルタル」という土地については、また別の機会に取り上げたいと思いますが、日本でも有名なとある保険会社の名前の由来となっていたり、

ジブラルタルがイギリス領ということは、ある程度は知られた話で、事情はここでは書きませんが、

スペインというなかなかの力がある国家の中に、現在もイギリスが海外領土を保持しているんだなと、やはり世界的な要所をより強く意識する話です。

 

 

お互い様!? ジブラルタルと「セウタ」「メリリャ」「カナリア諸島

 

 


f:id:spicy-geographer:20181224022500j:image

 

 

ジブラルタルという名前が比較的有名で、スペインはイギリスに要所を未だに押さえられているんだな、ということばかりが際立ちますが、

実は、スペインはジブラルタルの対岸のモロッコ王国の地に「セウタ」という海外領土を持っているのです!

 

言葉の表現は合っているかは微妙ですが、何となく漂う「お互い様」な感じ。

 

よって、ジブラルタル海峡の一部分は、イギリスとスペインが向かい合う、欧州と欧州の海峡になっています。

 

更にスペインは、「セウタ」だけではなく、モロッコ国内で隣国・アルジェリア寄りに、「メリリャ」という、これまた地中海に面した海外領土も持っていますし、

ロッコの大西洋側の沖にあるカナリア諸島もスペインの海外領土です。

 

 

イギリスのジブラルタル展開もなかなかですが、スペインもジブラルタル海峡周辺の地域にいくつもの要所を押さえていますね。

 

 

アフリカの領有権事情 

 

 

そして、スペインに要所を押さえられまくっているように見えるモロッコ王国ですが、そのモロッコも南に隣接する自国と同じくらいの面積の「西サハラ(サハラ=アラブ民主共和国)」という地域(日本は「サハラ=アラブ民主共和国」未承認)の領有権を巡る領土問題があり、

アフリカ全54ヶ国が加盟するアフリカ連合AU)」に、1984年に西サハラ(サハラ=アラブ民主共和国)」の加盟が認められた際に、ロッコは反発して脱退し、2017年に再加入するまでの33年間、アフリカ唯一のアフリカ連合未加盟の国家であったくらいです。

 

ジブラルタル海峡周辺の各国事情を見てみますと、語弊はあるかと思いますが、国力上位の国が南方の国力下位の国へ、ロケット鉛筆方式(?)の様に領土拡大を展開した形跡が現在も垣間見えて、なかなか興味深いです。

 


f:id:spicy-geographer:20181224042025j:image

 

欧米列強の支配時代を終え、ほとんどが独立・自治を果たしているように見えるアフリカ大陸に、今は「セウタ」「メリリャ」がスペイン領として残り、

島としては、スペイン領のカナリア諸島の他、マダガスカル島周辺にフランス領の「レユニオン」「マヨット」、大西洋側にイギリス領のセントヘレナ」「アセンション島およびトリスタンダクーニャ諸島」といった、欧州諸国の海外領土がいくつかあります。

 

 

モロッコ王国」が「アフリカ連合」に再加盟を果たしたとき、「アフリカ全54ヶ国と1地域(西サハラ)が全部揃った!!」と私も大喜びしました。

ジブラルタル」がスペインに返還されたり、「セウタ」「メリリャ」がモロッコに返還されたりしたら、私も大興奮することでしょうが、ここで書いた「お互い様」感のある話が出来なくなるのも残念だと、やや不謹慎な欲を持っています。